俺と火乃木は一旦寄宿舎に戻ることにした。 お互いどちらかの部屋の中でのほうが今後のことを話しやすいと思ったからだ。 誰かが聞き耳を立てている可能性だって考えなかったわけではないが、流石にそこまでするような奴がエルマの騎士にいるとは思えない。 で、今俺と火乃木は、俺の部屋にて今後のことを話しているところだった。 「それじゃあ、火乃木。お前の調査で分かったこととやらを教えてくれ」 「うん」 俺が寝ている間に行っていたと言う火乃木の調査。一体火乃木は何をどうやって調べていたのだろう。 「前にライカさんに、人間とは違う臭いがしたって言うことは話したでしょう?」 「ああ」 だからこそ、ライカさんを疑っているわけだがな。 「うん。それで考えたんだけど、今回の事件が1人の手で起こしたものなのか、それとも複数の人間の手で起こしたものなのか……。それを調べるために、エルマ神殿内を歩き回って、ライカさんと同じ臭いを持った人間がいないかどうかを調べてたの」 確かに、侵入者が1人とは限らない。ひょっとしたら複数の人間によって引き起こされた可能性だって十分考えられる可能性ではある。 火乃木の奴中々考えているな。 「具体的に、どうやって調査してたんだ?」 まさか1人1人の人間に臭いをかがせてと言うわけにはいかないだろう。 「うん。歩き回ってすれ違いざまに臭いをかぐくらいだったよ。ライカさんの臭いだって、近くを歩いたときに少しだけ感じただけだったから、それくらいで十分人間とは別の臭いを感じることは出来るんじゃないかって考えたんだけど……」 「うん」 「ライカさんの他に、ライカさんと同じような人間とは別の臭いって言うのは一切感じなかったの」 「そっかぁ」 ってことは、ライカさんが単独犯であると言う可能性は俄然高まったな。 そうだ! 今まで肝心なことを俺は火乃木に聞いてなかった。 「なあ、火乃木。ライカさんに感じた人間とは違う臭いって一体どういう臭いだったんだ?」 「え?」 火乃木は少し驚いた顔をした。 「う〜ん。そうだなぁ〜」 少し腕組をして考える。考えるってことは今まで感じたことのない臭いだったということなのか? 「ほら、例えば、魔獣や魔物の類《たぐい》を使役しているとか、取り付いているとか、そういうものの臭いだったりしたんじゃないのか?」 火乃木が上手く表現できないようなので、フォローを入れる。 「う〜ん……そういうのじゃあないんだけど……なんていうか……」 やっぱり火乃木は上手くいえないようだ。それでも何かを思い出したような表情をして、その直後こう答えた。 「なんていうか……生臭かった……」 「生臭い?」 なんだそれ? 人間から発する生臭い臭いって一体どんな臭いだっていうんだ? 「あのね、血の臭いって言うかな? ほら! 人間って、牛の内臓とか食べるでしょ?」 「ああ」 牛の腸のことか? それとも舌のことか? どちらかはわからないが、おそらくそういったものと考えていいのだろう。 火乃木はしかめっ面になった。あまり思い出したくない……というか想像していて気持ち悪くなったのかもしれない。 「あれに……近かったような気がする……」 ふ〜む……。 これはどう考えるべきか……。 火乃木の話が本当なら、ライカさんはかなり怪しい。 いや、火乃木が俺に嘘をつくメリットなんかないはずだ。だったら、今まで火乃木が話したこと自体に嘘偽りはないだろう。 だけど、この情報……一体何の役に立つのやら……。 なんにせよ、ライカさんが怪しいと言うことだけは間違いないだろう。じゃあ、どうする? どうやってライカさんが怪しいとする根拠を掴めばいいのか……。 そしてライカさんが犯人ならどうやってその証拠を掴めばいいのか。今この段階で直接問いただすわけにもいかないし、変に事を荒立てても他のエルマの騎士から白い目で見られる可能性もある。 まあ、後で考えることにするか。今はもう少し火乃木の話を聞いてみよう。 「それで、他には何かあったか?」 「うん。とりあえず、ライカさんのほかにその生臭い臭いを感じなかったから、次に問題になっている大聖堂に向かったんだけどね」 まあ、事件の現場はそこだしな。 「一応、見れる限りの部屋を見て回ったんだけど。妙なの」 「妙? 何が妙なんだ?」 「うん。大聖堂内には鍵のかかってる部屋とかかってない部屋があったんだけど。鍵のかかってる部屋からは例の臭いがしたんだ。ほんの少しだけど……。でもね、鍵のかかっていない部屋からは何も臭わなかったの」 「鍵のかかってる部屋からではなくて?」 「うん。だからおかしいなって思って。普通、鍵のかかっていない部屋に侵入者は侵入するでしょ? 鍵なんて持ってないはずだもん」 確かに妙な話ではある。 侵入者が存在するって言うだけでも不思議なのに、鍵のかかっている部屋だけ侵入して、鍵のかかっていない部屋には侵入していない。 火乃木の言っていることはこういうことなわけだが、そんなことありえるのか? 「鍵をぶち壊して侵入した可能性は?」 「それはないと思う。鍵そのものは破壊されたような形跡はなかったし」 「う〜む……」 まずいな……頭がこんがらがりそうだ。 「これって……どういうことなんだろうね?」 こっちが聞きたいくらいだ。 「ねえ、レイちゃん」 「ん?」 「あのさ、誰かに協力してもらうって言うのはどうかな?」 「どういうことだ?」 「ボク達が関わることで、確かにある程度は、エルマの騎士達だけでは得られない情報を掴んでいるとは思う。でも、これ以上の調査をするなら、僕達だけでは限界なような気がするの。ここからは信頼できるエルマの騎士にも調査してもらうことが必要なんじゃないかって思うの」 確かに。 繰り返すようだが、ライカさんが怪しいと言うのは俺と火乃木が掴んだ情報だ。恐らく他のエルマの騎士はライカさんが怪しいなんて微塵も思っていないはず。 だったら、エルマの騎士の側からしか……もっと言ってしまえばライカさんと立場が近い人間になら、新しい情報をつかめる可能性が出てくるかもしれない。 「火乃木は協力をお願いできそうなエルマの騎士に心当たりあるのか?」 「うん!」 やたら元気そうにはっきりと答える。あ、そういえば……。 「アーネスカなら、きっと協力してくれる! アーネスカはボクの友達だもん!」 そうだ。火乃木にはアーネスカがいたんだっけ。なら……。 「そうだな。アーネスカに頼んでみるか。あいつなら協力してくれそうだ」 「うん! 絶対協力してくれるよ! アーネスカはすっごいいい人だから、裏切ることだってないだろうし!」 火乃木はアーネスカに全幅の信頼を寄せているようだ。人見知りの激しい火乃木がそこまで無条件に信じることが出来る人間だと言うなら、問題ないだろう。 なら、早速行動に移すとしよう。行動は早いに越したことはない。 そう思い俺と火乃木は再びエルマ神殿へと足を運んだ。 「なるほど、あんた達が言いたいことはわかったわ」 俺と火乃木は今アーネスカと対峙している。 場所はエルマ神殿食堂。時間は既に十二時を回っており、昼食をとるためにエルマの騎士達がカウンターに並んでいる。 エルマ神殿の食堂はなが〜いテーブルが一つと無数の椅子があり、満席になると常に隣に誰かがいるようになる。 なんていうか王室の食堂を思わせる造りだった。 アーネスカの話によれば、淑女《しゅくじょ》としてテーブルマナーを身につけることも女性騎士たるエルマの騎士には必要なスキルと言うことで、夕食の時間が丸々テーブルマナーの講義になることもあるんだとか。 俺と火乃木の食事はすでにテーブルの上に乗っている。しかし、まだ俺も火乃木もそれに手をつけていない。アーネスカは少し食べ進んだところを俺達に邪魔された形だからまだアーネスカの皿にはかなりの量のパスタが乗っている。 そして、この場所で、俺と火乃木はアーネスカに合い、自分達の調査が行き詰りそうであると言うことを端的に話した。 「あんた達だけではこれ以上の調査に進展が望めないから、あたしにも協力してほしい……っと。そういうわけなのね?」 「ああ」 「お願いできるかな? アーネスカ」 「そりゃ、断る理由なんかないけど……」 アーネスカが口ごもる。何か言いにくいことでもあるんだろうか? 「あたしをそこまで信じてもいいの?」 ……? どういうことだ? 「火乃木はともかく、零児。あたしはあんたとはそれほど絆が強いわけでもない。まして、お互いのこと、何も知らない状態なのよ? そんな人間を信じてしまってもいいの?」 なるほど。そういうことか。 今エルマの騎士は外側……つまりエルマ神殿にはいない人間に対して懐疑的だ。お互いに疑心暗鬼が生まれ、ただでさえ刺々《とげとげ》しい雰囲気を仲間同士で放っていると言うのに、そんな人間に対して頼みごとをしてもいいのか、とそう聞いてるんだ。 アーネスカの言う通り、俺とアーネスカの間には仲間意識も友達意識もない。アーネスカはあくまで、自分はエルマの騎士の一人であり、俺はエルマ神殿にアスクレーターとして派遣された人間としてしか見ていないのだ。 俺はそんなアーネスカの問いに答える。 「人見知りの激しい火乃木がたった一日でここまで信頼しているんだ。理由はそれだけで十分だ。俺がお前を信じるにはな」 「ふ〜ん……」 アーネスカの口元がつりあがる。何かを企んでいるような目だ。どことなく妖艶な雰囲気をたたえたその瞳はまっすぐに俺の目を見つめる。 まるで俺が信頼するに足る人間であるかどうかを見定めているかのようだ。いや、実際そうしているのかもしれない。 正直言うと直視するのが辛い。それほどにアーネスカの瞳は妖艶だった。 「いいわ。信じましょう」 しばらくして、アーネスカはそう言った。 「そうか。協力、感謝するよ。アーネスカ」 「あんた、嘘はつかなそうだしね。それに、そこまで信じられているなら、期待に応えるのも道理かと思ってね」 「じゃあ、どうして最初から、レイちゃんのこと信用してくれなかったの?」 今まで口を閉じていた火乃木が少しばかり非難の目でアーネスカにそう問う。 その理由は恐らく……。 「耳にたこが出来るくらい聞いているだろうけど、今このエルマ神殿内部は疑心暗鬼に満ちている。侵入者は実はエルマの騎士による芝居だったとか言って、お互いを牽制し、睨みあう人間さえいる。そんな中で、本当に信用できる人間って言うのは限られてるからね」 「そっか……」 火乃木の表情が沈む。アーネスカのことを信じていたのに、それでも自分達に疑いの目を持たざるを得ないこの状況に落胆したのかもしれない。 そう、このエルマ神殿内で起こっている事件はちょっとばかり異常なんだ。 お互いに信頼していた仲間を疑わなければならない可能性。 それほど面識がない人間を疑わざるを得ない可能性。 そして、エルマ神殿の外からやって来た人間を疑わざるを得ない可能性。 エルマ神殿内にいる人間は多かれ少なかれ誰かを疑っているのだ。 今はまだないが、俺や火乃木に疑いの目を一方的に向けるエルマの騎士が現れる可能性だってあるのだ。 いや、ひょっとしてもう始まってる可能性だってある。 そんな状況だからこそ、アーネスカは俺のことを百パーセント信じきることが出来ないのだろう。今だって本当の意味で俺のことを信じてくれたわけではないだろう。 アーネスカと火乃木の間に存在する絆は確かなものであるようだ。この短い間だけで随分仲良くなれたみたいだしな。 アーネスカが俺を信じたのはあくまで間接的なものだろう。火乃木が自分を信じてくれる。それを理由に、俺はアーネスカを信じたのだ。 アーネスカはそれと同じ考え方で俺を信じたに違いない。 「火乃木! そう暗い顔するんじゃないわよ!」 アーネスカの表情と口調が明るくなる。 「こういう状況だから、それもやむなしってだけなんだから! あんたも元気だしなよ!」 極めて明るく、アーネスカは火乃木に振舞う。 そんなアーネスカの態度を見て、火乃木も表情をほころばせる。 「う、うん」 「じゃあ、お互いのことを信用できたとする上で話をするけどさ」 「ああ」 「あたしは一体、何をすればいいのかしら? あんた達の話を聞く限りでは、もう誰かが犯人であるとして行動しているような感じだったけど」 「それについては場所を変えて話そう。この場で話すような内容ではない」 「そう。わかったわ」 アーネスカはそういって自らの食事に集中する。俺と火乃木もそれにならい食事を始めた。 「ライカを疑えってこと?」 「そう言うことだ」 食事が終わり、アーネスカが仕事に戻るまでの残された時間。神殿の裏側にて、俺と火乃木とアーネスカ意外の人間がいないことを確認してから、俺はアーネスカにライカが怪しいと言うことを伝えた。 「その理由は?」 理由、か。 火乃木がライカさんに対して、人間とは違うなんらかの臭いを感じたから。とは流石にいえない。 「アーネスカ。悪いがそれについては、今は言えない」 「どういうこと? あたし達はお互いに共通する侵入者を捕まえるために協力しているのではないの? ライカを疑わなければならない理由がないのに、疑って行動しろと言うのは矛盾してると思わない?」 そんなことはわかってる。だが言うわけにはいかない。 その理由を言うことは火乃木が人間とは違う存在であることを間接的に伝えることになる。 そうなれば、アーネスカを皮切りに多くのエルマの騎士から火乃木に対して疑いの目を向けられかねない。 アーネスカが俺のことを百パーセント信じていないのと同じように、俺もアーネスカのことを百パーセント信じきることは出来ない。特に火乃木の正体に関することは……。 だから、今は言うわけにはいかない。 「アーネスカ。この事件が終わったら必ず言う。だから、それまでは信じてほしい」 「信じるって……」 「アーネスカ。お願い!」 火乃木がアーネスカに対して頭を下げる。 その横で俺は言葉を続けた。 「理由があるんだ。根拠だけを今は言えない理由が。だが、その根拠となっているものは現時点で一番信憑性が高いものでもあるんだ」 「……」 「だが、この事件が解決した頃にはその根拠も言えるようになる。その時に必ず明かす。だから、今はただ俺たちの言葉を信じてほしいんだ」 「……あたしに根拠の提示はしない。しかし、その根拠は現時点で最も信頼できて、しかしそれを教えるわけにはいかない、か……」 「……」 「今更こんなこと確認することじゃないと思うけど」 「……?」 「あたしは、あんた達を信じていいのよね?」 「ああ」 アーネスカの問いに俺は迷いなく答える。ここで言いよどんでいては、俺たちのことを信用してもらうことは出来ないだろう。 「う〜ん……」 アーネスカは腕を組んで少し考え事をしている。アーネスカなりに考えているのだろう。本当に俺たちがアーネスカにとって信用できるのかどうか。 「もう一つ聞いていい?」 「ああ」 「ライカがまず間違いなく、侵入者と何らかの関係がある、または侵入者であると言う証拠を押さえることが出来るの?」 ぐっ……それは……。 それを言われると弱い。 ライカさんが人間と何かしら違う部分があるとはっきり分かるのは火乃木だけだ。しかも今のところそれを臭いという形でしか表現できない。 しかも間違ってましたではすまない。他のエルマの騎士にアーネスカがライカさんを疑っていると言う事実が漏れれば……。 そのときはアーネスカが根拠なくライカさんを疑ったとして叩かれる可能性だってある。 「ライカは私の親友なの。それに、今現在のエルマ神殿の状況を考えれば、根拠もなく誰かを疑うなんてことは出来ない」 やはりそうなるか。 そうなんだ。誰が誰を疑ってもおかしくない状況ってことは、次の日には自分が疑われてしまう可能性だってありえる話なんだ。 アーネスカだってエルマ神殿での地位があるはず。それを危うくしてまで、昨日あったばかりの俺たちの言う言葉を信じることも出来ない。 ここは諦めざるを得ないか? 「但し、状況によっては信じてあげないこともないわ」 状況によって? 「それはどういう意味だ?」 「言葉どおりの意味よ。零児、あんた昨日巡回したんだって? ライカと一緒に」 「ああ」 「あんた達の言うことが本当なら、ライカはあんたと行動を一緒に取ったからことに移せなかった可能性がある。だとしたら……」 「ライカさんを一人で行動させて、ボロが出たところを取り押させる。と言うことか?」 「そうよ」 「そんなこと簡単に出来ることじゃないぞ?」 「確かにそうかもしれない。でも良く考えてみて。もし、あんた達がライカを疑ってかかって、本当に怪しいと言う確証が得られたら。しかも、それをエルマの騎士や騎士見習いの子達まで信じざるを得ない状況を作ることが出来たら……」 「!」 そうか。アーネスカの言っていることの意味がわかったぞ。 夜の巡回でライカさんがボロを出すとしたら、他のエルマの騎士達もそれを知ることになる。 即ち本格的にライカさんが怪しいと言う可能性が高まるわけだ。 「わかった?」 「ああ、言っていることはわかった」 「私はその段階になったらあんた達のことを信じようと思う。そうすればより自然に周りの騎士達と連携を取りつつ、ライカが怪しいと言う状況に持っていける。その段階になったら、あたしはライカが犯人であると言う証拠を掴むために動く。それでどう?」 「なるほどな。それで文句ねえ」 「決まりね」 「あ、で、でも……」 俺とアーネスカの会話に今まで割って入ってこなかった火乃木が言う。 話の腰を折ることが出来ず今まで黙っていたんだろう。 「もし、そこまでやってライカさんが潔白だったらどうするの?」 そのときは……。 「……そのときはそうねぇ……。疑われる行動を取ったライカが悪い。ただし、過剰に疑ったあたしも悪いって言うことで喧嘩両成敗で片つけるしかないわね」 まあほかに術はないわな。どちらもいい、悪いと言う状況にさえなればお互いの疑心暗鬼を均衡に保つことは可能だろう。 そうしなければどちらかが一方的に叩かれるだけだ。 「だな……それに失敗したときのことを考えていたら、身動きが取れない。今ある可能性の範囲内で動いてみるしかないさ」 「そうだね」 「納得できた?」 「うん」 「じゃあ、おさらいしようか」 そこで俺は火乃木とアーネスカの会話をとめる。 「俺と火乃木でライカさんが怪しいと言う証拠。それがエルマ神殿全体で認められるレベルのものなら、アーネスカは俺たちと協力して、本格的にライカさんが犯人であると言う証拠を掴むために動き出す。これでいいな」 「ボクはOKだよ」 「あたしもそれで文句ないわ」 「オーケー。じゃあ、俺は夜に備えるとしよう」 勝負は夜の巡回。そこでライカさんが怪しいと言う状況証拠をまずは掴む! 「じゃあ、あたしは仕事に戻るわ。二人とも頑張って」 「ああ」 「頑張ってね!」 アーネスカが仕事に戻っていく。 俺はアーネスカに聞こえないであろう状況になってから再び口を開いた。 「火乃木」 「ん? 何?」 「実は今日……」 |
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